妊娠と喘息に関して

  1. 妊娠と喘息
  2. 妊娠中によくある質問
  3. 妊娠中の治療の注意点

妊娠と喘息

妊娠は女性にとって、初めての経験の方もあり何かと不安が多いものです。妊娠をすると喘息の程度は大体三分の一の人では変わらず、三分の一の人では悪くなり、残りの三分の一の人では反対に症状が良くなります。妊娠をすると母親は胎児と自分の体の分を呼吸することになるので、喘息をよくコントロールをしておくことは重要です。 しかし、なかには薬を飲んでいても(吸入していても)大丈夫かという不安から薬を減らしたり、喘息発作がよくなると止めてしまったりすると、喘息の症状が悪くなってしまう患者さんがおられます。

胎児は母体から酸素を取り込んでいます。このため母体が喘息発作を起こせば、母体は息ぐるしくなりますし、母体が息苦しければ、胎児も酸素不足になります。妊娠中はお母さんの体は、お腹の中の赤ちゃんと自分自身の2人分の酸素を取り込む必要があります。喘息の発作が起こると、うまく酸素を取り込むことができません。これでは、お腹の中の赤ちゃんも酸素が足りなくなって、苦しがります。このようなことを防ぐため、妊娠中も喘息の治療を続けることをお勧めします。

妊娠にあたっての最も心配されるのは胎児への影響でしょう。現在使われている吸入ステロイド薬の催奇性はほとんど問題なく、妊娠中も継続して使えると考えられています。特に吸入ステロイドの中でもパルミコート(薬品名ブデソナイド)は安全性が高く、データもあります。長時間作用型気管支拡張剤も吸入薬、経口剤ともに催奇性は報告されていません。妊娠された方、あるいはこれから妊娠しようとされる方の中には、妊娠中の薬物摂取を必要以上に恐がることはありません。

大切なお子さんが生まれてくるわけですから、この心情はよくわかります。
繰り返しになりますが、妊娠中の薬物治療については色々なことがわかってきていますので、安全な妊娠と出産のためにまた生まれてくるお子さんのために、喘息は充分にコントロールしてください。治療の目標は、投薬を避けることではなく、適切な投薬を受けて、安全な出産を行なうことです。妊娠中の喘息治療の目的は投薬をさけることではありません。薬害が繰り返し報道される昨今、薬害を恐れる心情はよく理解できますが、よくこのことが取り違えられているようです。

医師から投薬された薬を吸入あるいは内服せずに、喘息の発作のコントロールができない場合、母体もお腹の中の赤ちゃんも、酸素が充分にとれず、害の方が大きいのです。お腹の中の赤ちゃんにとっても母体にとっても、充分な喘息のコントロールができないリスクの方が、薬害のリスクよりも大きいと考えられます。
喘息を適切にコントロールすることで、母体にとってもお腹の中の赤ちゃんにとっても、安全なお産、妊娠ができます。

ただし正常分娩でもいわゆる奇形は1%から3%前後に認められます。上記の気管支喘息の治療薬はこの率を高めないということであり、奇形児が生まれないということではありません。この点は御理解ください。

妊娠中によくある質問

喘息があっても、安全に子どもが産めるでしょうか。

妊娠期間中喘息がうまくコントロールされていれば、安全な出産ができます。
また胎児に悪影響があることはありません。喘息がうまくコントロールできていれば、何事もなく子どもを出産することができます。反対に、喘息がうまくコントロールできていないと、胎児が低体重となるという報告があります。ですから喘息をコントロールすることは、母体にとっても胎児にとっても大切なことです。

なぜうまく喘息がコントロールできていないと胎児に影響があるのでしょうか。

喘息がうまくコントロールできておらず、充分な呼吸ができないと、母親の血液の中の酸素の量が減ります。胎児は母親から酸素をもらっているので、母親の血液中の酸素が減れば、胎児の血液中の酸素も減ってしまいます。このため、発育が遅れたりします。胎児は常に正常な成長と発育のために、充分な酸素を必要とするからです。

喘息の薬は胎児に影響があるでしょうか。

今までの報告で、吸入ステロイドや短時間作用型の気管支拡張剤では、胎児に悪影響が出ることはありません。むしろコントロールの悪い喘息の方が胎児に悪い影響を与えます。但し、新しい薬品で抗ロイコトリエン拮抗薬については、妊娠での安全性が確立していませんが明らかな催奇形性は報告されていません。

妊娠のどの時期に喘息の状態は変わるのでしょうか。

喘息は妊娠中期の後半から妊娠後期の前半に悪くなる傾向があります。しかし、最期の4週間に症状が悪くなることは少なくなります。喘息がよくコントロールされていれば、分娩中に喘息発作が起こることはまれです。

ラマーズ法をすることはできますか。

大多数の喘息患者さんで、ラマーズ法をすることができます。

母乳を赤ちゃんにあげることはできますか。

母乳で育てることは赤ちゃんの免疫力を高める意味でよい方法ですし、推奨できます。母乳中への薬の移行は吸入ステロイドや、キサンチン製剤では安全です。他の薬剤については、データがないこともあり、かかりつけの医師とよく相談して下さい。

上記の質問は妊娠においてよく問われます。ただし喘息の程度は人によって様々ですし、症状に応じて様々の薬が使われています。喘息をよくコントロールし、妊娠中の喘息の悪化を防ぐことは、母体と胎児両方にとって大事なことです。かかりつけの医師(呼吸器科やアレルギー科)に定期的に受診し、よく相談し、ピークフローメーターを使った自己管理をすることも大切です。
どうかかかりつけの医師に受診し、不用意に薬を中止して喘息のコントロールを悪くしないで下さい。

妊娠中の治療の注意点

  1. 喘息は慢性の病気なので、症状をコントロールすることが大切です。
    喘息を治そうとは思わないで下さい。また喘息は症状がいつも一定に出る病気ではなく、時には症状が強く、呼吸困難を伴うこともあれば、胸の重い感じだけのこともあります。また夜間や季節の変わり目といわれる春や秋に出やすいのも特徴です。このため継続的な治療により、喘息発作を起こさないことが重要です。
  2. 喘息の治療にあたっては、まず喘息の発作が出ないようにすることが大切です。そのためにはタバコは禁煙し(これは大切なことです)、アレルギーの元になる(アレルゲンと呼びます)アレルゲンをできるだけ避けることが大切です。最近はペットを飼う方が増え、犬や猫によって喘息が起こる方もしばしば受診されます。ペットとの絆が強いのは理解できますが、もしこれらのペットが原因なら、せめて妊娠から出産の間だけでも離れられないものでしょうか。ペットが喘息の原因になっている場合どうしても喘息は重症化しやすくなります。
  3. 喘息の治療は大きく2つに分けて、非薬物療法と薬物療法があります。これら2つとも重要な治療法であり、アレルゲンを避けること、禁煙するといった非薬物療法をすすめる一方で、薬物の治療法も考えてゆくことが大切です。
  4. 喘息の発作が急に出たらどのようにしたらよいか主治医と話し合っておきましょう。そうすることで、喘息の発作がひどくなる前に早く治療にとりかかれ、母体と胎児をともに低酸素におちいれさせることが防げます。
  5. 一般に使用する薬剤はできるだけ、少なくすることが望ましいですが、時に症状がコントロールできなければ、薬剤の全身投与もされることがあります。
  6. 副鼻腔炎、鼻炎などは喘息は悪化させることがあります。
    これらの病気を治療することで喘息をよりよくコントロールできるようになります。