咳が止まらない 咳外来の実際

  1. 咳が止まらない。その原因は?
  2. 見落としてはいけない危険な咳 – 肺癌
  3. 見過ごしてはいけない咳 – 肺結核
  4. 長引く咳の原因(感染症編)
  5. 長引く咳の原因 – 薬剤編
  6. 風邪をひいてから咳(セキ)が止まらない – 感染後咳嗽(ガイソウ)
  7. 長引く咳の原因 – 気管支喘息
  8. 長引く咳の原因 – 喫煙
  9. 長引く咳の原因 – 胃食道逆流症
  10. 長引く咳の原因 – 後鼻漏による咳
  11. 長引く咳の原因 – 慢性気管支炎と肺気腫(COPD)
  12. 長引く咳の原因 – アトピー咳嗽
  13. 長引く咳の原因 – 咳喘息
  14. 最後に

1.咳が止まらない。その原因は?

咳が治らないという訴えで来られる患者さんはたくさんおられます。当院は呼吸器科をメインとしていることもあり多くの患者さんは咳のために来院されます。咳は症状としては頻度として多く,時に診断に苦労します。また咳の原因は多岐にわたります。病歴や症状で診断がつく場合もむろんありますが、胸のレントゲン写真や呼吸機能の検査が必要となる場合も少なくはありません。以下に長引く咳の原因について述べます。咳の原因は風邪だけではないのだと知っていただければ幸いです。

2.見落としてはいけない危険な咳 – 肺癌

肺癌

見落としが致命的になる疾患がいくつかありますがトップは肺癌と肺結核です。現在肺癌は女性にも増えてきており死因のトップに迫ってきました。なぜ日本で非喫煙者の女性に肺癌が増えているのかは不明ですが、肺癌は慢性の咳の原因としてどうしても否定しておかなければならない疾患です。

ある日、1年近く続く咳のために受診された患者さんがおられました。肺の写真では向かって左下に淡い影が見えます。(写真1)肺癌を疑いすぐにCTをとりましたが、4cmあまりの肺癌が見つかりました。(写真2)
レントゲン写真

写真1:右の下肺に淡い影が映っています。
写真2:CTでは肺癌が背中側にあります。

現在肺癌は癌死のトップの座を占めています。長引く咳は時として、重篤な病気が原因のことがあります。特に肺癌は死亡につながる病気です。現在日本では男性で4万人、女性で3万人を越える死亡者を数えます。長引く咳にかくれている病気があります。1ヶ月以上続く咳は医療機関を受診してください

3.見過ごしてはいけない咳 – 肺結核

肺結核

結核は過去の病気のように思われがちですが、まだまだ患者さんはおられます。最近の傾向としては、高齢者ならびに都心部に集中して発生しています。また新たに結核が発症する人数は、最近一年間ではおおよそ3万人余りで、無視できる数ではありません。結核の症状は咳や発熱で風邪と間違われますが、時に発見が遅れ周りの人も感染してしまい、集団発生がニュースになっています。写真は長引く咳で受診され、即日入院となった患者さんの胸のレントゲン写真です。向かって左の肺の上の所に白い影が見えます。これが結核の陰です。患者さんはまだ若い元気な方でした。長引く咳の原因はほとんどは心配のいらない病気ですが、時に重篤な病気のことがあります。咳が2~3週間以上続いたら医療機関を受診してください。

胸のレントゲン写真

4.長引く咳の原因(感染症編)

4-1.マイコプラズマ肺炎

感染症とはウイルスや細菌によって起きる病気のことです。マイコプラズマ肺炎の名前を聞かれた方は多いと思います。マイコプラズマ肺炎は珍しい病気ではありませんが、咳が長く続く病気の代表的な感染症です。マイコプラズマは世間で流行する(市中肺炎と呼びます)肺炎の中では割合と多い肺炎の原因となる微生物です。季節と無関係に、家庭や学校で小流行がみられます。マイコプラズマ肺炎は肺炎マイコプラズマという菌により起きる病気で、季節性はなく一年を通じて発生します。感染は咳などで飛ぶ小さな粒子を吸い込む飛沫感染とドアノブなどから細菌が手につく接触感染によりますが、感染力は強くありません。マイコプラズマ肺炎は生涯のうち、何度もかかることがありますから、一度マイコプラズマ肺炎にかかったから大丈夫と安心するわけにはいきません。

マイコプラズマはまず、喉(咽頭部)に定着し広がっていきます。マイコプラズマ肺炎の特徴は若い人がかかりやすく、症状の特徴は頑固な咳で、咳の期間は長期にわたります。病気の初期は痰を伴わない咳と発熱で、咳のために来院される患者さんの原因として、念頭におかなければならない病気の一つです。マイコプラズマ肺炎は原因を確定するために、抗体と呼ばれるタンパク質の上昇を確認する必要があります。問題となるのは、肺炎が治っても咳が比較的長く続くことです。具体的には「風邪」(実はマイコプラズマ肺炎)のあと咳だけが長く続くような場合です。咳が2週間以上続く時には考えなければならない病気の一つです。職場で「風邪をひいて咳をしている人が多い」場合、マイコプラズマの小流行が起こっている場合があるので要注意です

マイコプラズマ肺炎は熱や咳、全身倦怠感といった風邪に似た症状で始まります。咳は長く続くことが多く、熱が下がってからも3、4週間続くこともあり、咳がなかなか止まらない場合には考えなければならない病気の一つです。

診断は直接マイコプラズマを分離する方法もあります。ただ時間が経過すると検出率が落ち、また抗生剤の投与により分離できない場合もあります。その際は血液中の抗体というタンパク質を測って診断をする場合が多くなります。風邪と言われて通常の抗生剤で治らない場合、疑ってみる必要があります。

                  マイコプラズマ肺炎の胸部写真

4-2.百日咳

百日咳の流行がマスコミ等で取りあげられ百日咳を心配されて来院される方が目立ちます。百日咳は名前が示すように、咳が長く続く感染症の代表格です。特に6ケ月以下の乳児では時に重症化する病気です。成人でも長く続く咳の病原体として重要です。

百日咳は百日咳菌という菌によって起こる感染症で、飛沫感染や接触感染が感染経路として知られています。典型例には次の3つのステージがあります。

  1. カタル期
    普通の風邪様症状で発生します。段々と咳の回数が増えて、咳の程度もひどくなります。約2週間程度続きます。
  2. 痙咳期
    次の段階としては「コンコンコン」という激しい咳が連続して起こり、合間に息を吸う時に「ヒュー」という笛を吹くような音がします。咳をしすぎて吐くこともあります。この期間は2~3週間続きます。息を吐くときにヒューと音がするのは喘息など別の病気ですので、説明するときには可能なら区別してください。
  3. 回復期
    激しい咳は次第におさまりますが、咳がおさまるまでに2週間から時に4週間あまりかかることがあります。

日本では3種混合ワクチンの中に百日咳ワクチンが入っており、若い世代では受けておられる方が多いと思います。ちなみに1994年から接種年齢が2歳から生後3ケ月に引き下げられています。残念ながら百日咳は初発症状だけでは風邪との区別は困難です。風邪と思っているうちに、段々と痰を伴わない咳がひどくなってきて、来院するというのがよくある例です。特に百日咳ワクチン(DTPワクチン 3種混合ワクチンに含まれています)を受けていると、症状が典型的でない場合も多く、受診まである程度時間がかかり、前医ですでに抗菌剤の投与を受けている場合も多く、受診までに2、3週間かかる場合も珍しくありません。

診断は百日咳菌を検出するか、抗体と呼ばれる血液中の蛋白質が増加していることから行います。しかしながら医療機関を受診する時には、すでに咳がひどくなってからかなりの日数がたっていることも多く、菌が検出できないことも多く正確な診断を下すのは難しい病気ですが最近は百日咳抗体でもPT-IgG抗体とFHA抗体が測定できるようになり、診断はより正確にできるようになりました。

4-3.クラミジア肺炎

クラミジアは性感染症としても有名ですが、ここでとりあげるのは肺炎を起こすクラミジアで、全く別物です。クラミジア肺炎は肺炎という名前が付いていますが必ずしも肺炎を起こすわけではありません。クラミジア肺炎の特徴はヒトからヒトへ伝染し風邪、急性気管支炎や肺炎を起こすことです。風邪や急性気管支炎では痰の出ない咳が主な症状で、この咳は3~4週間続きます。このため、長く咳が続く病気としては無視できない存在です。特にクラミジア肺炎のうち、C.pneumoniae(クラミジアニューモニアエ)と呼ばれる菌種では人から人へ感染するため、家庭内や学校で流行することがあります。高齢者では重症化することもあります。

最初は痰の出ない咳で始まり時がたつにつれて痰を伴う咳に変わることもあります。診断にあたってはクラミジア肺炎にかかると抗体と呼ばれるタンパク質が血中に増加するのでIgM抗体(IgM抗体とは急性期にだけ上昇してくる抗体です)が上昇していればクラミジア肺炎にかかったと診断できます。調べてみると案外珍しくない感染症で、咳が止まらないときに考えに入れておくべき感染症です。

5.長引く咳の原因 – 薬剤編

薬剤編

血圧を下げる薬(血圧降下剤)の一部に頑固な咳を起こすことがあることは医師の間ではよく知られています。これはACE(エーシーイー)阻害薬と呼ばれる血圧降下剤で起こります。

咳はこの薬を飲んだ人全員に起こるわけではなく、頻度は薬によっても異なりますが、数パーセント程度です。この薬を処方される場合には、「咳が出ることがありますから、咳が出るようでしたら言ってくださいね」と、話をしています。また、院外処方で薬局から薬を出される場合にも同様の注意がなされています。問題となるのはこの種類の薬を飲んでいることを知らずに咳が続く場合です。患者さんにしてみれば、まさか血圧の薬で咳が出るとは思わずに、血圧を下げる薬を飲み続け、薬のせいだとは思わないので、咳について主治医に相談しないといったことが時に起こります。

ACE阻害薬は優れた血圧降下剤です。心血管病変を持つ患者さんにはよく使われ効果も高い薬です。ただし咳が止まらなければ他の薬剤に変更せざるを得ません。現在外来で見ていて頻度は少ないのですが時に出くわす、咳止めで治らない咳です。薬品の商品名は多種にわたっていますのでここで具体的に商品名は挙げませんが、降圧剤を飲んでいる人は呼吸器科へ行く前にチェックしてみてください。その上で主治医に相談してください。どうか自己判断で薬の内服を止めないでください。投与しているには投与する理由があるはずですから主治医に相談してください。また咳のために受診する際には、なるべく現在飲んでいる薬は全部持ってきてください。

6.風邪をひいてから咳(セキ)が止まらない – 感染後咳嗽(ガイソウ)

感染後咳嗽(ガイソウ)

「風邪をひいてから咳だけが残る」あるいは「咳が止まらない」といった訴えで外来を受診される患者さんはかなり多いものです。この場合の診断は少しやっかいです。咳喘息やアトピー咳嗽といった8週間以上続く慢性の咳を主訴とする病気の初発症状の可能性と、感染後咳嗽(ガイソウと読みます、感冒後遷延性咳嗽とも呼ばれます)の可能性、あるいは百日咳やマイコプラズマ肺炎やクラミジア肺炎などの可能性があるからです。

感染後咳嗽とは「呼吸器感染症の後に続く、胸部X線写真で肺炎などの異常所見を示さず通常自然に軽快する遷延性あるいは慢性咳嗽」と定義されていますが、これを読んだだけでは何のことやらわかりにくいですね。感染後咳嗽とは、臨床的な診断です。つまり他の病気がないことを確かめて経過などを診た上でなされる診断です。ですから何らかの検査が陽性に出たからといって診断できる病気ではありません。臨床上の特徴としては1 風邪症候群が先行している。2遷延性咳嗽を生じる他の疾患が除外できている。3自然軽快傾向にあるといった特徴が挙げられます。
感染後咳嗽とは風邪のあとなど気道炎症を起こしたあとに続く咳のことです。原因は実のところ、完全には解明されていませんが、空気の通り道である気管支の表面を覆っている細胞がダメージを受け上気道および/もしくは下気道にも炎症が及んでいるために起こると考えられています。このため、気道からは表面を守るために分泌物が過剰に分泌され本来ならばこのような分泌物を運ぶ繊毛細胞もダメージを受けているためうまく働かず分泌物が痰となって出ないことも咳の原因になっていると思われます。

また、鼻や副鼻腔といった上気道にも炎症が起こり分泌物が咽頭を刺激することも咳の原因となっている場合があります。さらには強い咳をすることでお腹の中の圧力が高まるために、胃の内容物が逆流し逆流性食道炎を引き起こしていることも咳の原因の一つと考えられています。このように、感染性咳嗽は一つだけの原因ではなく色々な要因がからまって起こっています。

気管支の表面を覆っている繊毛細胞

気管支の表面を覆っている繊毛細胞。
炎症を起こすとこの細胞がダメージを受けてうまく痰が出せなくなります。
(写真はhttp://remf.dartmouth.edu/images/mammalianLungSEM/source/9.htmlより引用)

7.長引く咳の原因 – 気管支喘息

気管支喘息

喘息の症状として咳はよくみられるものです。咳が止まらないと訴えてこられる患者さんの中には気管支喘息の患者さんがおられます。しかし咳をしているご本人が喘息とは思わず、風邪や花粉症として放置されていることがあります。ちなみに花粉症では原則としてくしゃみは出ますが咳は出ません(もちろん例外はあります)。あるいは医療機関にかかっても喘息と診断されずに、抗生剤の長期投与を受けられていることがあります。これは必ずしも、本人のせいあるいは医師の技量が劣っているせいではありません。「ヒューヒュー」「ゼーゼー」といった音を伴って夜や早朝に咳で目が覚めることが多いのが特徴ですが、典型例だけではないので時に診断に苦慮します。

喘息は子どもの病気と考えられがちですが、中年以降に発症することは珍しくありません。患者さんが医療機関を受診しているときは喘鳴(ヒューヒュー、ゼーゼーといった音)が消失しており、診断できないことはままあります。またこちらから「こんな音はしませんか」といって喘鳴のヒューヒュー、ゼーゼーといった音を真似すると「△□月にはそんな音がしていました。」あるいは「寝る前だけ、朝起きた時だけ、運動した時だけ音がします。」と答えが返ってくることもあります。受診時に喘息の症状が出ていないことが診断を困難にしていると思います。一方患者さんも咳にだけ目が行ってしまい、まさか自分が喘息とは思わずに医療機関を受診することも診断を難しくしている一因です。特に小児喘息が治ったと思っていてもある日突然再発することもありますから小児喘息のある方は注意が必要です。

気管支喘息というと子どもの病気のように考えられがちですが、実は患者さんの数は大人の方が多い病気です。気管支喘息の患者数のグラフを見て下さい(図1)。
気管支喘息の患者数のグラフ

10歳以下と70歳以上にピークがあります。

確かに小児喘息のところにピークがあり、年令別に見ると1歳~9歳の患者さんの数が多いのですが、その後も15歳以降患者数は減りません。ふたたび50歳頃から徐々に増え喘息の患者さんの人数は70歳台でふたたびピークになります。このため喘息の総患者数を年令別では男女ともに15歳以上の方が喘息患者数が多いことがわかります。(図2)
喘息の年齢別患者数

14歳以下と15歳以上での喘息患者数 男女ともに15歳以上の方が総患者数としては多い。

「今まで喘息といわれたことがなかったから」「小児喘息ではなかったから」「親兄弟に喘息持ちはいないから」といって喘息ではないと思いこむのは禁物です。喘息はある日急に発症することも多いからです。胸が重い、音がする、夜中に息苦しい、痰がからむといった症状があれば呼吸器科を受診して下さい。

一ヶ月以上続く風邪はそうそうあるものではありません。長く続く咳、止まらない咳には何かしらの原因があります。喘息もその原因の一つであることを知っておいて下さい。

8.長引く咳の原因 – 喫煙

喫煙

頻度としては最も高いかもしれませんが、喫煙している人はあまり診療所へ来られませんので、外来ではかえって少ないです。タバコを10本以上吸うと、25%以上の人が慢性の咳をきたします。40本以上吸う人では50%以上の人が、慢性の咳をきたします。でもタバコを吸う人はあまり咳が出るからといって、医師のもとへは来られません。

肺癌の合併が恐いので、40歳以上になったら一年に1回胸のレントゲン写真と喀痰にガン細胞が出ていないか、 細胞診の検査を受けるようにして下さい。

9.長引く咳の原因 – 胃食道逆流症

胃食道逆流症

胃では消化のために胃酸が分泌されています。普通この胃酸は口や食道の方へは戻ってきませんが、人によると胃酸が戻ってきて喉(のど)を刺激し、咳が出ることがあります。

胸焼けを感じることや、たくさん食べた時に咳が出ること、横になると咳が出ることが特徴的です。しかし、胃食道逆流性では、咳だけが唯一の症状のこともあり、このような場合は診断に困ります。確定診断は胃食道内視鏡で食道炎をみつけることですが、それでも診断がつかないことがあり、胃酸の分泌を抑制する薬を飲んでもらうこともあります。これで咳が軽くなれば、胃食道逆流症と診断することもあります。

正確には食道内のpH(酸の度合い)を測ることで胃酸が逆流しているか確かめることもありますが、診療所レベルの一般診療ではあまり行われていません。

10.長引く咳の原因 – 後鼻漏による咳

後鼻漏による咳

これは鼻炎による分泌物が喉へ流れ込んで出る咳です。アレルギー性鼻炎をはじめ鼻水の出る病気で起こります。患者さんは鼻の詰まる感じ(鼻閉)を感じて鼻汁が喉の奥に流れ込む感じを感じていることが多いようです。
耳鼻科の医師と協力して治療にあたります。抗ヒスタミン剤が有効です。

11.長引く咳の原因 – 慢性気管支炎と肺気腫(COPD)

慢性気管支炎と肺気腫(COPD)

これもタバコを吸う人に出てくる病気です。最近ではCOPD(慢性閉塞性肺疾患)と呼ばれることが多くなりました。タバコの煙が刺激になって気管支に慢性の炎症がおこり、痰を伴った咳が出ます。一年につき「2ヶ月ないし、3ヶ月痰を伴う咳が2年以上にわたって出る」というのが元来の定義でしたがCOPDと考えが変わるようになってからはあまり言われなくなりました。時に喘息と併発することがあります。
喘息というと子どもの病気のように思われがちですが、ある日突然大人もなることがあります。
また小児喘息があった人が、 風邪をひいたり天候の具合で出てくる人もあります。
軽症の場合、症状が咳だけのこともあり注意が必要です。
胸のレントゲン写真を撮る、呼吸機能を測る、ピークフロー(喘息の項を参照下さい)を測ることで診断をつけます。

12.長引く咳の原因 – アトピー咳嗽

アトピー咳嗽

アトピー咳嗽という考え方は、日本の藤村先生によって提唱された概念で、比較的新しい考え方です。咳喘息と同じように、咳だけを唯一の症状とする病気です。咳喘息と異なり、放置しておいても、喘息になることはありません。また、気管支拡張剤が効かないことも特徴の一つです。

アトピー素因がある患者さんは、

  1. 痰をともなわない咳が3週間以上続くこと
  2. 気管支拡張剤が無効であること
  3. アトピー素因があること、もしくは喀痰中に好酸球という白血球が増えていること
  4. 抗ヒスタミン薬、もしくはステロイド剤にて、咳の発作が消失するといった特徴があります。

なお、アトピー素因とは、

  1. 喘息以外のアレルギー疾患を患ったことがあるか、現在かかっていること(たとえばアトピー性皮膚炎)
  2. 白血球のうち、好酸球と呼ばれる白血球の一種が血液中に増加していること
  3. 血液中の抗体と呼ばれる蛋白質のうち、アレルギーに大きくかかわっているIgE(アイジーイーと読みます)が増加していること
  4. 特異的IgE(IgEのうち、ハウスダストやダニなど、特定のアレルギーの元になる物質(アレルゲンといいます)に対するIgEのことです)が陽性に出ること
  5. アレルギーの元になるアレルゲンを皮内に注射すると赤く腫れること

以上のような1~5をもってアレルギー素因と呼んでいます。大分わかりにくい説明と思いますが、こんな病気があると知っておいて下さい。

13.長引く咳の原因 – 咳喘息

咳喘息

咳喘息は咳だけを唯一の症状とする病気です。通常咳は、痰を伴いません。咳喘息は、気管支喘息に進行することもあるので、注目されています。咳喘息では、気管支は何らかの刺激(例えば冷たい空気や煙)に対して過敏になっており、刺激があると咳が出ます。気管支拡張剤が効くことが特徴です。

咳喘息の特徴の一つは、咳が夜間に多いことです。また電話で話をしたり、冷たい空気にあたったり(冬に暖房のきいた部屋から寒い戸外へ出たり)運動をしたりすると咳が出ることです。検査の所見では、呼吸機能は正常です。診断にあたっては、

  1. 慢性的に咳が出る。
  2. ヒューヒュー、ゼーゼーといった喘息の特有の症状がない。
  3. 呼吸機能、胸のレントゲン写真が正常。
  4. 鼻炎や副鼻腔炎(慢性的な鼻づまりは要注意です)がないこと、胸焼けがないこと。
  5. 気管支が特定の刺激に対して、過敏になっており、咳がでること

以上がそろえば、咳喘息といえます。治療は気管支拡張剤(内服や吸入)や吸入ステロイドを使います。

14.最後に

咳をきたす疾患はたくさんあり、またすべての症例で原因が分かるわけではありません。慢性の咳をきたす病気はたくさんあります。主な病気を書きましたが決してこれで全部をカバーしているわけではありません。丹念に病歴を尋ねながら診断していきます。