咳喘息とは

1~4. 咳喘息とは
5~6. 咳喘息の治療

1.咳喘息とは何でしょうか?

咳喘息は喘鳴(ゼーゼーいうこと)や呼吸困難を伴わず、咳だけを唯一の症状とする病気です。喘息という名前が付いているのは最初にこの病気を報告した医師が「慢性の咳のみを症状とする喘息」という論文がもとになっていることが関連しています(ちなみにこの当時は少しの刺激で気管支が縮収する気道の過敏性が喘息の本態として重要視されていましたので、報告した医師らがこの定義に従ったためです。)。咳喘息は気管支喘息とは別の病気として扱われています。咳喘息は、8週間以上続く慢性の咳の原因としては多い病気です。また最近は咳喘息の患者さんのおおよそ三分の一が気管支喘息に移行するため注目されています。咳喘息は「ヒュー ヒュー」「ゼーゼー」といった音は聞こえませんが、わずかですが、気管支が狭くなっていると考えられています。

2.咳喘息はアレルギー性の気管支炎です

咳喘息では、喀痰、肺胞洗浄液、気管支粘膜の生検、組織中(気管支鏡を用いて採取した気管支の表面の細胞の塊のこと)に好酸球が増加しており、ほぼ気管支喘息と同様の変化が起こっていると考えられています。

3.咳喘息の症状

咳喘息の特徴は、第1は空咳(痰を供なわない咳)です。また出やすい時間帯は深夜から早朝にかけて多いのですが必須ではありません。咳は日中にもでます。咳喘息という名前はついていますが、少しでも喘鳴(ゼーゼーする音)があれば、気管支喘息や他の病気を考えます。風邪や運動、天候、会話をすること等によって、咳はひどくなります。咳の程度は様々ですが、ひどい場合は肋骨の骨折を起こすこともある程の強い咳が出ます。

アトピー素因がある場合が多く、ハウスダストやダニといった抗原(アレルギーの原因となる物質)に対し、特異的IgE抗体という蛋白質が血液中に増えていることも多い病気です。呼吸機能は正常ですが、ピークフロー値の日内変動が見られることが特徴です。また気管支拡張剤を使用すると咳が良くなることから、わずかですが気管支が狭くなっていることが推定されます。咳喘息では、気管支肺胞洗滌液中や生検で採取してきた気管支粘膜内に好酸球という白血球の一種が増加しており、気道の炎症が関与しているものと考えられています。

4.咳喘息の診断

まず診断にあたっては、他の咳が続く病気との鑑別が必要です。長引く咳の陰には肺癌や結核など見逃してはならない病気が隠れていることがあります。このため胸のエックス線写真と肺活量の検査は行います。さらに咳喘息の特徴として気管支拡張剤が効くことが診断の大きな手掛かりです。このためホクナリンテープやセレベントといった気管支拡張剤を使い、咳がおさまるかをみます。気管支拡張剤が無効の場合は他の病気を考えなければなりません。

5.咳喘息の治療

医療機関にかかる患者さんの場合、かなり激しい咳が長い間続いているのが通常ですので、いったん咳喘息と診断した場合には吸入ステロイドや抗ロイコトリエン薬、時に抗ヒスタミン剤といった気管支喘息とほぼ同じ治療薬を使います。これは先程書いたようにアレルギー性のタイプの気管支炎が咳を引き起こしていると考えられるので、気道の炎症を抑えるのが大切だからです。ただし中には、咳があまりにもひどくて夜も眠れない様な場合は、短期間経口ステロイドを使う場合もあります。また咳喘息の治療に吸入ステロイドを使っていなかった時には、30%~40%が喘息に移行していったというデータがあります。

このため咳喘息では治療には気管支喘息と同じように吸入ステロイドを用います。ステロイドと言うと「副作用は大丈夫か」と心配される方も多いと思いますが、吸入ステロイドはステロイド剤を粉末状にし、吸入する薬剤です。このため吸入した薬剤は全身に回ることなく気管支にだけ効きます。全身投与で現れるような副作用(顔が丸くなる、骨がもろくなるなど)は出ませんのでご安心下さい。ちなみにステロイドは体の中でも副腎というところで毎日絶え間なく作られているホルモンの一種で、ヒトが生きていくには不可欠のホルモンです。

6.咳喘息の治療はいつまで必要か

咳喘息の治療期間はどれ位かについては、今のところ専門医の間でも統一した見解はありませんが、症状が治まっても少なくとも3ヶ月は吸入することをおすすめしています。これは咳喘息ではアレルギー性の気管支炎を起こしているため、この炎症が治まるのにある程度時間がかかるためです。また咳喘息と言っても軽症から重症まで様々ですので、各個人にあった治療薬や治療期間を選択します。少数ですが重症の患者さんでは年間を通しての治療が必要な方もあります。またいったん症状が治まっていても風邪や気管支炎をきっかけに咳が再燃する患者さんもおられます。咳喘息と診断されて、風邪の後に咳が止まらない場合は咳喘息の再燃の可能性がありますので、医療機関にご相談ください。